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メラプティ(紅白)にはメラプティですが、日の丸の旗はありませんでした

先週の日曜日、東洋経済オンラインにMRTJ開業に関わる記事を発表させていただきましたが、予想通り賛否両論を呼びまして、反響は十分であったのではないかと思います。ジャカルタ住みの方や、鉄道関係の方からはよくぞ書いてくれたという声を頂く一方、日本の方や一部関係者からは何を言ってんだアイツという声も多くあるようです。しかし、案外日本国民も冷めているのだな、とある意味安心したのも事実。そもそも私がこの記事を出した最大の理由は、開業セレモニー、また開業時の日本のメディア報道です。

 やれ「日本が全面支援」だの「オールジャパン」だの、「日本の技術が渋滞解消するだの」あまりの御用メディアぶりに虫唾すら走りました。日本が全面支援?見えない部分は中国製に韓国製ですけど何か?オールジャパン?実態は日系企業同士の喧嘩に足の引っ張り合いですよ?たかだか16kmの鉄道が出来たところで渋滞など一切解消できるはずないですけど?と、言い出したらキリがありません。だいたい、現状最右翼である産経が上げた、カメラの前でニコニコする乗客の画像とか、プロパガンダもいいところで、中国人記者が同じ事すれば、全く同じポーズを取りますよ、あの人たちは。ですから、こういう雰囲気をぶち壊すために書いた記事ですので、親方日の丸懐疑派が一定数いるというのがわかったのにはホッとしました。誤解している人がいるようですが、もちろん私は懐疑派、というよりも、もはや非国民の領域です。昔からの当ブログの読者の皆さんはよくわかっていると思いますが、ことさら政府案件には批判しかしません。私の怪社では、日本から来たビジネスマンは基本的に門前払いされますからね(笑)仮に、うちに7/11なんかが人材不足なんで人売ってくださいと来たら、八日堂を店じまいすればいいんじゃないですかと言われるでしょう。

とはいえ、です。あの開業セレモニーには違和感を抱かざるを得ません。いくら、日本は金を貸しただけ、その金でインドネシアが日本企業に発注しただけ、という構図であったとしても、ジャカルタ都市高速鉄道事業はあくまでも政府間協力という建前でやっている以上、開業セレモニーで日本人が一言も話さないと言うのは、どうも腑に落ちません。大使は前の講演で、中国対策は過去2000年間の課題だと述べています。しかも、アメリカへのおんぶにだっこも、もはや限界。日本の自助努力と、中国との戦略的関係の維持とまで言っており、かつ戦略的価値を共有していける仲間の存在が必要、その中で有力なのがインドネシアとまで言っている。にもかかわらず、この様は一体何なのかと言いたいのです。

こちら、2017年10月に円借款案件として電化開業したBekasi~Cikarang間のセレモニーの様子。これはこれであまりにも茶番な式典で、見ていて恥ずかしい限りでしたが、まだこれの方がマシのように思えてきます。このときは、JICA関係者がスピーチしましたし、背後のバナーにしっかりとJICAのロゴが入っています。それから何より、未だに不思議なのは、このJICA支援ではお馴染みのこの記念プレート(下の写真)がMRTJには設置されていないのです。少なくとも式典時点ではありませんでした。Bundaran HI駅をくまなく探すと、どこかにあるのでしょうか。

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Cikarang開業時にはご丁寧に、駅舎新設の3駅に設置されました
お金だけ貸して、日系企業がボロ負けしたタイのブルーラインにも設置されていますよね

ジャカルタ~バンドン新幹線が完成した暁には、必ずや開業式典で中国国旗がはためくことになるというのは、容易に想像がつきます。下手すれば、LRT Jakartaですら、韓国旗、いやHyundai Rotemの横断幕がバーン!と貼られる可能性があるでしょう。にもかかわらず、それをしない日本と言うのは、一体何なのでしょう。黙っているのが美徳と本気で考えているのでしょうか?お上は口では中国を敵にしているくせに、いざやるとなったときに何もできない。あくまでも、ここは個人ブログですので書いてしまいますが、J●CAや大使館にそういう根回しやらロビー活動出来る人がいないというのは明らかです。少なくとも、現政権のやり方をもう5年間も見ていれば、開業セレモニーがこういう進行になるということは十分予測できたはず。私のようにインドネシアで土着生活している人たちは、みんな気づいていましたよ、大統領は自分の手柄にして全部持っていく、と。これも何度も書いていますが、「奢るものは施しを与えよ」これこそがインドネシア人の考え方の根本にあるのです。イスラム思想と、インドネシア古来の農村扶助社会から生まれたこの考え方はあまりにも強固すぎます。だから、日本が何かしたところで、決してありがとうとは言いませんし、言わすことも出来ません。嫌な言い方ですが、日本は金ヅルに過ぎないのです。これはインドネシア人の本音。ですから、あの場に日の丸一つ立てられなかったのは日本側の大きな失策です。何故先手を打つことが出来なかったのでしょうか。それとも、何も言わなくとも、日本の存在感は知らしめているとでも、思っているのでしょうか(実際そう思っている長老気取りの老害が在留邦人に多数いるのも事実です)。

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大統領スピーチの最中には、関係者と聴衆がジョコウィ氏の立候補番号1番を上げるシーンも
石井大使は後ろで笑って見ているだけ、優しいですね。

翻って現場のプロフェッショナルたちに言わせると、そんなのどうでも良い話。職人は事故なく、遅延なく列車を走らせること、それが使命とクール過ぎます。シビれます。どんなに無理なスケジュールをお上からふっかけられようが、受けた仕事こなすのが責務なのです。だからこそ、その労に報いるためにも、あのセレモニーの場に日の丸を立てる必要があったのではないでしょうか?ことさら、上物の部分だけを切り取れば、日本中のエキスパートを総動員で仕上げているわけで、ただでさえ足りない人材を割いてまでして、ジャカルタに一つの鉄道会社を作っているのです。それにも関わらず、単なる大統領の手柄にされるってのは、どうなのよと思うのです。こんな状況では第二期工事は茨の道です。正直もはや、誰もやりたくない。だいたい、作ったところで、第二期区間は誰も客が乗らない(笑)こんな区間、バスウェイに任せておけばいいのです。そして、その先の東西線に、日本の出る幕はないのではないでしょうか。それこそ、バンコクのように金だけ貸してオワリということにもなりかねません。結局、日本の役人たちの考えてることもインドネシアと全く同じで、自分の実績作りに満足しているだけ。だから、ナショナリズムに訴えるだけで長期ビジョンをいつまで経っても描けないのです。

バンドン新幹線は、日本でやると半ば決めておきながら、中国に寝返ってから批判されるのであって、別に初めから中国と作りますと言えば何ら問題はなかった。だから、今後の都市鉄道整備も、別に誰の得にもならないのならば、中国にやらせておけばいいと思います。まして通勤型なら中国中車の車両で十分満足に使えますし、何より安い。しかも、巡り巡って日本の会社にも金は落ちる可能性もあり、下手に韓国あたりに持っていかれるより、よほどマシな結果になるでしょう。

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MRTはこの先どこへ向かうのか?

私の文章の稚拙さに原因はありますが、記事の方はこのように二方面への批判+αで釈然としない部分があったかと思います。私としても、正直心にどこかモヤっとした部分があったのですが、あくまでも「パクアン急行」名義として言いたいことを言わせていただきました。乞食の戯言としてお受け取り下さい。

鉄道コム

コメント

コメント一覧

    • いずみ中央
    • 2019年04月28日 10:36
    • こんにちは 何時も拝見して居ります
      「この鉄道は日本製です」と宣伝すれば次の受注に繋がるのに、何故日本製と宣伝しないのでしょうか。売り込む気有るのでしょうか。
      マニラ、ハノイ、ホーチミン、プノンペン、ヤンゴン、パナマシティと都市鉄道輸出が続きますが、「日本製」である事を宣伝して次の受注に繋げて欲しいものです。
    • パクアン急行
    • 2019年04月29日 17:02
    • >いずみ中央様
      役人は自分の手柄を取れれば良いだけですので、そういう発想はないのでしょうし、何をどうすれば今後の受注に繋がるかといった議論をしたとしても国交省など烏合の衆ですから、ロクな提案が出ません。しかも、今回はMRT側からの圧力があったなんて言う噂もありますので、日イ双方のどうしようもなさがこの式典に全て現れたというこということでしょう。
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