Cj8tPFYf
廃車回送が始まっているE217系
このまま全て解体となるのか?
画像提供:かりあげ様

※リンクミスがありましたので、再公開いたしました。申し訳ございません。
ステイホームのお盆期間、特にネタもありません。こんな日は家で妄想に浸るに限ります。なんだか最近、すっかり音沙汰なく、現地マニアの記憶からもすっかり忘れられつつある203系マト69編成を使用した車両限界検測。2020年1月から始まったこの測定、結局様々な箇所での接触が判明したものの、一時的な中断を経て、ほぼ全線での測定を4月までに終了しています。直後に未曽有のコロナ禍に突入し、もはや新形式導入どころではなくなってしまったのは百も承知ですが、今後、計画の再開はあるのでしょうか?





前回の妄想から1年ですか・・・
過去記事をお読みでない方は、まずこちらからご参照下さい

主に床下の車両限界の調査を目的としていたこの測定は、E217系のダブルデッカー導入の為というのが専らの噂で、日本国内にまで大きく伝わることになりましたが、結局公式からのリリースも無く、既にE217系の廃車が始まっています。前回記事で考察した通り、近年のJREからの車両譲渡では、置き換えが始まる直前に公式リリースされるのが通例であり、E235系がデビューした時点で、そのお知らせが無かったことから、既に脈無しと考えて、大方間違いない情勢でしたので、今回はどうして秒読み段階とまで思えた譲渡計画が破断したのかを見ていきましょう。

ただし、これまでの205系譲渡と全く異なる要素として、205系からE233系へのバトンタッチでは約1年未満という急ピッチな置き換えであったのに対し、今回のE235系の投入ベースはゆっくりとしたもの(そもそもE217系が大量にいるというのもありますが)で、数年がかりでの置き換えとなります。解体計画が一括ではなく、年度毎で組まれているのならば、中盤になって譲渡計画がふっと湧いてくる可能性も無きにしも非ずですので、予めご了承ください。特に私鉄やメトロと異なり、解体を自社施設内で行っていることから、ある程度融通は効くものと思われ(203系のときも置き換え終盤のどんでん返しでしたからね)、特に2021年3月改正以降、多数の解体待ち車両を抱え、ついには東京車両センター内での解体も始まっているくらいですから、出せるものなら出したいというのがJREの意向にも思えます(東京解体分が譲渡対象だった??)。

DSC_0625_R
たった1年前にこんな測定が実施されていたとは
遠い過去のよう・・・

さて、インドネシア国内の状況ですが、2020年で失効した中古機材輸入禁止特例の延長に関わる手続きは行われていません。そもそも、この特例延長が為されない限り車両譲渡は不可能なわけですが、インドネシアの法令など、あって無いようなもので、よく言えば臨機応変、悪く言えば朝令暮改、いくらでも解釈の変更は可能と、ゴムのような存在です。だいたいKCIが本当にE217を欲しいならば、国営企業省、運輸省、商業省に特例延長をして然るべきです。それを現時点でしていないということは、コロナでそれどころではないというのもありますが、熱は冷めてしまったことは事実です。仮に一時的なコロナによる収入減が譲渡中止の理由なら、いずれ計画が再燃する可能性はあります。しかし、当ブログを欠かさずに読まれている方ならお気づきの通り、中古機材輸入禁止云々以前にE217系が物理的に譲渡出来なくなっている可能性が高いのです。

DSC_0150
車両限界に厳密に合わせると、電車はこのような形になります
旅客用ステップも本来はせり出してはダメなんでしょうね

一体どういうことかと言うと、KCIに親会社のKAI/運輸省の車両限界が適用されることになったことです(インドネシアの車両限界詳細は国会図書館なりJICA図書館なりに数値入りの資料がたくさん転がっておりますので、そちらをご参照下さい)。本来、KCIはインドネシア運輸省の定める車両限界に従って然るべきですが、長らく中古車を使い続けてきたことで、なし崩し的に日本車のサイズ≒建築限界となってしまいました。中古車を阻止したいブディカルヤ率いる運輸省すら、そこを突かなかったというのは、流石はインドネシアマインドとしか言いようがありません・・・。掠るくらいTidak apa apa、ぶつからなきゃokというのが、おおよその認識ですからね。ちなみに、中古車導入当初、都営6000系のスカートはRheostatikに準じた、カウキャッチャースタイルのしゃくれたスタイルでしたが、後に東急8000/8500系・103系以降に採用されている幅の広い鉄板スタイルに交換されており、これが何か関連しているのか、気になります。

DSC_0507
ジャカルタの低床ホームは車両との間にかなり隙間がありました
というか、低床ホームが本当に低い・・・

DSC_0576_R
スカート切り詰めが実施されたM23・M22編成
低床ホームとの隙間に注目

しかし、思わぬところに落とし穴がありました。それが、ジョグジャ電化開業です。ご承知の通り、205系M23編成の配給時にオリジナルのスカートが、一部駅の低床ホームに接触するというトラブルを発生させています。ジャカルタ首都圏でも205系がそのままの姿で走ることは、理論上不可能にも関わらず、しれっと走っているのは、知らず知らずのうちに低床ホームが高床化され、又は低床ホームであっても電車に対応して、いつの間にかクリアランスが拡大されていたからに他なりません。問題なのは、このあたりを全く書類で管理していないことで、一体いつ、どこのホームが、どのように改修されたのか、もはや誰もわからないことです。ジャカルタ外でも、当然そのまま走れると勘違いしたことで、スカート、それに業務用ステップを低床ホームに接触させたわけです。よって、転属2本目となったM22編成はスカートを外しての配給となりました。そして、営業開始時にはオリジナルスカートの裾切り詰め、業務用ステップの折り曲げて対応することになったわけです。

DSC_0803
2020年にもなって、まさかスカート無しの
205系が拝めるとは思いませんでしたよね・・・

当初、この対応はジョグジャ転属組だけに見られるかと思われましたが、これもご承知の通り、武蔵野線最終譲渡組、第12陣3本の配給時にも同様にスカート撤去の処置が取られました。ただ、営業開始時にはオリジナルのスカートを再設置しており、車両限界論争にも決着がついたかのように見えました。

DSC_0775
ジャカルタでもスカート切り詰め第一号となった205系H1編成

しかし、2021年1月の全検出場編成から、なんとジョグジャ編成同様のスカート切り詰め及び業務用ステップの折り曲げが開始されたのです。さらに言えば、中ドアに設置されていた低床ホーム対策のステップの撤去も3月の全検出場車から再開されています(スカート切り詰め、ステップ残存の横浜線H1編成はレアな存在!?)。つまり、ジャカルタ首都圏にも同様に、KAI共通の車両限界が適用されることになったのです。これでは、いくらE217系に合わせた測定を実施し、接触箇所のホーム削り、障害物の撤去を実施したとしても、KAIの、つまりオランダ時代の狭い車両限界が否応なく適応されるとすると、そもそもダブルデッカー車導入を前提としたE217系の導入は絶望的になってくるのです。ダブルデッカー車抜きならば問題ないですが、棒連結器や機器構成上の問題から組成変更は難しく、白紙撤回するしかないというのが事の顛末ではないでしょうか。ジョグジャ電化開業が思わぬ方向に響いてしまいました。しかし、根本的な車両不足は解消しておらず、車両限界問題を解決するのか、それとも別形式の譲渡を再検討するのか、はたまた2024年の新車導入まで現状の保有数で綱渡りを続けるのか、引き続き注目です。

おまけ
低床ホームとか、スカートとか色々
DSC_0347
車体が完全に超低床の1番ホームにせり出しています
なお、客車の車体幅は最大3000㎜(RheostatikやMRTJも同様)ですので、
拡幅車体がNGというのは大きな勘違いです

DSC_0363
日車気動車MCW302 
車体幅3000㎜からホーム裾の限界まで絞り込むので
不格好な見た目になりがち・・・

DSC_0020
ジャカルタコタ停車中の103系
やはり低床ホームと車体の隙間に余裕があります

DSC_0260
ドゥリ4番線
低床ホーム時代に205系が入っていたら接触していた??
いや、2014年の一時期、横浜編成が入線していたはずですが??

DSC_0968
古い画像を引っ張り出したついでに、こんな罐を

DSC_0089
こうやって目を慣らした後に205系のオリジナルスカートを見ると、
かなり横幅が広いことがわかりますね

◆いつもご覧いただきありがとうございます◆
1日1回のTETSUDO.COMバナークリックにご協力お願いします
鉄道コム

コメント

コメント一覧

    • ジャカルタの電車大好き
    • 2021年05月14日 23:13
    • 5
      車両限界問題を解決してメトロ8000系を譲渡してもらうこともありなんじゃないでしょうか?
    • パクアン急行
    • 2021年05月15日 22:43
    • >ジャカルタの電車大好き様
      そもそもスカートのないメトロ8000系では車両限界には抵触しません。しかし、8000系に対してはKCIから一度誠意のない断り方をしているので、ここで手のひらを返せば、メトロとの関係悪化の再発は避けられませんね。いつまでたってもKCIは学習しませんね。

      コメントを連投されると、スパム扱いされ消えてしまいますのでご注意ください。
    • 野津田車庫
    • 2021年05月20日 02:30
    • こんばんは。

      E235系登場後もニュースリリースが出ないので破断になったことは想像してましたが、ジョグジャカルタ地区の電化が弊害を生むとは全く予想外でしたね…。
      限界に近付きつつあるチョッパ制御車や205系の中でも劣化の激しい車両がある事を考えると、果たして2024年まで現在の保有数を維持出来るかも疑問ですし、何とか別形式の譲渡計画が浮上して来れば良いのですが。
    • パクアン急行
    • 2021年05月20日 12:10
    • >野津田車庫様
      E217を導入する気満々でしたから、KCI自体がまさかの展開に驚いているのではないでしょうか。コロナ明けを見据え、そろそろ動かないと間に合わない頃合いですが、果たしてどうなるでしょうか。流石に車両不足が限界に達していることは本社も気づいているとは思いますが・・・。
    • 長門にいろく
    • 2021年06月02日 09:20
    • こんにちは。横須賀線沿線民です。
      正直E217系譲渡と言う話を聞いた時、最初は魅力的に感じましたが、じっくりとE217系を見てみると、正直、あの過酷な環境に耐えられるのかと言うくらいボロボロで、最近乗っているときもギシギシ言うので「結果的に安物買いの銭失いになるのでは」と思う自分が居ます。
      あと個人的には20年近くお世話になったE217系は「横須賀線E217系」として天寿を全うしてほしいなと思う個人的思い入れもあったりします(笑)
    • パクアン急行
    • 2021年06月02日 14:40
    • >長門にいろく様
      こんにちは。仰る通り、E217は買ったとしても安物買いの銭失いになるのは違いありません。当然、日本側はより状態の良い、メトロ8000あたりを押しているわけですが、インドネシア側の意向なので仕方ありません。まあ、結局に流れたというのならば結果オーライではないでしょうか。
コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット