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レバラン入って早々にラッピングは解除されました

以前にもちらっと紹介した通り、レバラン期間中の越境禁止期間中、定期列車の大幅運休と引き換えに、速度向上試験を繰り返していたKAI、試運転では北本線の平坦区間において120㎞/h運転を行っていたようですが、パンチャシラの日となった6月1日より、栄光の1列車~4列車こと特急アルゴブロモアングレックが110㎞/h運転を開始し、ジャカルタ~スラバヤ間で15分弱のスピードアップを実現しています。





2月10日の改正でスピードアップしたばかりですが・・・

2月10日のダイヤ改正で、昨年の試運転結果を反映し、最高速度が100km/hから105km/hに引き上げられたばかりのKAIの特急列車ですが、これで問題なしと見たのか、今回さらに5㎞/hの速度向上が実現しています。これで問題が無ければ115㎞/h、120km/hとさらに引き上げていくのではないでしょうか。なお、2月10日時点では、新型客車を使用するほとんどの特急で105㎞/h運転が始まっていますが、今回はアルゴブロモアングレックのみとなっており、あくまでも試験的な意味あいなのか、それとも今後は超特急たる1~4列車限定で速度向上が実施されるのか、注目です。2014年の北本線複線化完成で大幅スピードアップを果たした後も、ダイヤ改正ごとに数分のスピードアップを図っていましたが、今回再び一気に10分台の大幅短縮となっています。2019年以降のスピードアップの編成をまとめてみましょう。

【2019年12月1日ダイヤ改正】
3レArgo Bromo Angrek SBI8:30→GMR17:30
5レArgo Bromo Angrek SBI20:15→GMR5:15

4レArgo Bromo Angrek GMR8:15→SBI17:15
6レArgo Bromo Angrek GMR20:30→SBI5:30
※既報の通り、当時1・2列車はArgoWilisに譲っていました

【2020年2月10日ダイヤ改正】
1レArgo Bromo Angrek SBI9:00→GMR17:44 ▲16分
3レArgo Bromo Angrek SBI20:35→GMR5:19 ▲16分

2レArgo Bromo Angrek GMR8:00→SBI16:42 ▲18分
4レArgo Bromo Angrek GMR20:30→SBI5:12 ▲18分
※最高速度の105㎞/h化及び一部区間の軌道改良完成に伴う速度向上

【2020年6月1日時刻修正】
1レArgo Bromo Angrek SBI9:15→GMR17:45 ▲14分
3レArgo Bromo Angrek SBI20:50→GMR5:20 ▲14分

2レArgo Bromo Angrek GMR8:00→SBI16:29 ▲13分
4レArgo Bromo Angrek GMR20:30→SBI4:59 ▲13分
※最高速度の110㎞/h化及び一部区間の軌道改良に伴う速度向上



特に2月10日時点と6月1日を比較してみると、さらに13~14分の短縮をしています。ただ、あくまでもダイヤ改正ではなく、既存スジの修正ですので、KCIの電車との兼ね合いもあり、ジャカルタ側のダイヤはさほどいじらず、スラバヤ側で調整していることがわかります。

とにかく、ここまでKAIが焦るのは、コロナ禍による鉄道需要の低下です。2010年代以降、右肩上がりで伸び続けてきたKAIの輸送人員、伸びゆく高速道路との競合も指摘されてきましたが、渋滞で全く使い物にならないバンドン高速からのおこぼれ需要からパラヒャンガンを大増発したり、また2014年のジャカルタ~スラバヤ間の通称トランスジャワ完成後も、定時性、そして高価格帯のラグジュリー投入などで、バス、マイカー利用者との棲み分けを図ってきました。

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ジョグジャ詣では毎度お世話になっているRosalia Indahの2階建て車
1階が1×1のラグジュリー
2階が足を伸ばせるエグゼクティブプラス

しかしながら、このコロナ禍ではご承知の通り、運輸省はイジメとも言えるほど鉄道のみに運行規制を強化しており、鉄道の大幅本数減に加え、陰性証明書所持義務のない高速バスに相当量の人が流れています。しかもバス製造業界は2018年頃までに低床車の国産化(というか、低床シャーシの輸入解禁)に成功しており、各バス会社は二階建てラグジュリーバスを大量投入し、鉄道の半値でより快適な移動の提供を実現。さらに、陰性証明書取得が義務付けられているものの、便数の多さ(航空はほとんど規制されていない・・・)、乗車時間の短さがコロナ禍での決め手になっているのか、鉄道利用者がいっこうに戻らない中、航空は平常時に近い回復を見せています。航空は鉄道のような隣席明けも実施しておらず、超密密の満席。おまけに機内食も通常通り提供されるなど、陰性証明書所持以外に運輸省は航空会社への規制を課していません。よほど飛行機の方が危ないのでは?と思いますが、利用者の間では、不特定多数の人間が乗る鉄道は危険という、旧来の固定観念が未だに成立しているようにも思えます。無法地帯の日本の鉄道はさておき、インドネシアでは、とっくの昔に、完全記名性、本人確認、全席指定と国内航空以上に厳しいシステムになっているのですが・・・。おまけに、乗車率5割以下なんですから、なんの心配もないわけで・・・。

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5月下旬のスカルノハッタ空港の様子・・・普段通りの混雑ぶりには正直驚きました
ちょっと海を渡る仕事が入ったため、やむなく飛行機で移動
6月に国内正常化、7月に指定国からの外国人受け入れも現実のものに近づいています

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5割以下の鉄道に対し、
国内航空線はほぼ100%本数を維持

バスも航空機も、ガルーダとその系列を除けば民間会社ですので、運輸省は規制を課すことが出来ず、鉄道だけを規制せざるを得ないというのもあるのですが、これではKAIが危機感を露わにするのも当然です。KAIは国営企業グループといえど、独立採算が基本の株式会社です。ですから、コロナ明けを見据え、スピードアップの準備を着々と進めているのです。しかし、なんと、今回のアルゴブロモアングレックのスピードアップそれだけではありませんでした・・・。

偉大なるパンチャシラの日
国旗を持って乗車するディディック社長

もはや動く広告塔となりつつあるKAIディディック社長、今日もご機嫌の様子でスピードアップ初日のアルゴブロモアングレックに乗車しているのですが、なんとここで超サプライズ発表が。全く事前告知無しで、私も驚いてしまいましたが、6月1日より、アルゴブロモアングレックに限り食堂車での車内調理を再開との報!!

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KAI公式より
鍋をふるってナシゴレン調理の様子を見るディディク社長以下幹部たち

近年の車両冷房化と火災危険性への配慮から、インドネシアのみならず、世界的に食堂車での調理が減少し、事前調理品の”レンチン化”が進んでいます。しかし、味が悪いのは当然で、特に合理化のため、KAIが2015~2016年頃から始めた、外注冷凍品へのクレームは一般利用者からも殺到、その後、特に評判の悪いナシゴレンなど、一部をチルド品(外注のままですが)に切り替える(→ナシゴレンパラヒャンガンの復活)等の試行錯誤を繰り返し、今では逆にほとんどがチルド品化されています。ジョーナン時代から始まる経営合理化施策も一巡し、見直すべきところは再び見直すという段階に入ったと言えます。身内主義から顧客主義を掲げるディディック社長にこれまた拍手。なお、車内でのガス利用は引き続き禁止されていますので、電磁調理器を導入しています。これまた、アルゴブロモアングレックのみの施策なのか、今後他の列車にも波及するのか、注目したいですね。

社歌も十年ぶり?に更新
旧社歌と比較してお楽しみください

ディディック社長の思いが詰まった?新社歌
公開時期からして、2月10日ダイヤ改正でお披露目でしょうか


旧バージョン

色々と変わっており、KAIの急成長・急革新時代は一旦終わった印象を受けます。Melayani sepenuh hatiからMelayani sepenuh cintaに変わっているところも大きなポイントかもしれません(笑)

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コメント

コメント一覧

    • いずみ中央
    • 2021年06月05日 10:08
    • こんにちは
      何時も拝見しております

      最高速度を日本並みの120km/hに引き上げれば、ジャカルタ〜スラバヤ8時間が実現しそうですね。
      160km/hの高速新線は必要無さそうですが、本当に作るのでしょうか。
    • パクアン急行
    • 2021年06月05日 18:29
    • >いずみ中央様
      仰る通り、この速度向上は表向きにはバス、飛行機との競争力強化ですが、仰る通り、北本線高速化も絡んでいるのでは?と見ています。インドネシア側も、さすがにJICAの子ども騙しのようなF/Sに気づき始めており、おそらく、日本案を蹴る理由づけにするのではと思います。ちょっと仕事で関係各所回ってますが、インドネシア側はもう日本に呆れているという感じですね。まじめにやるならやるなら、フル規格以外にあり得ません(二重投資になるのでバンドンからの延長でしょう)。JICAはアポ取りしても何も語らず、門前払い様相です。それでも、日本は自分で墓穴を掘っていることに、気づいていないんでしょうね。
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