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これから2年、長い道のりでした

先週、2度に分けて東洋経済オンラインでタイに渡ったキハ40にまつわる記事を公開していますが、商用媒体には書ききれない生々しい話がありますので、こちらでこっそり呟きます。あちらでも少し書いていますが、運用開始までここまで時間がかかったのには、今回の輸送を請け負った物流会社兼商社のあまりにも無責任な対応があります。





配給記事書いていたんですね…

ご承知の通り、これら20両が長らく住処としてきた秋田車両センターを発ったのは、2024年3月のこと。複数回の甲種回送で新潟県藤寄駅まで輸送された後、3月末までに新潟東港に陸送され、タイへの船積みのときを待ちました。引退から3年も経過した中、再び公の場に姿を現したのだから、驚いた人も多いことと思いますが、ここまで時間がかかった裏には、様々な事情が絡んでいます。

まず、記事にも書いた通り、これらのキハ40は初めからタイに渡るということが決っていたわけではなかったということ。当初、この20両は、どうやらJICA案件でコンゴ民主共和国の首都、キンシャサにに渡る予定であった模様です。日本の政府開発援助(ODA)で同国の空港アクセス路線改良プロジェクトが存在し、中古車両の導入が前提となっていました。しかし、このプロジェクトが中止になったことから、引退後も保管されていたこの20両は宙に浮くことになってしまったわけです。

そこで、新たな譲渡先をJR東日本側でも探していたと思われ、東南アジアを中心として、新たな候補として、いくつかの国名が上がってきました。突拍子もなくベトナムの名前が挙がってきたのもこのタイミングです。もちろん、ベトナム側に購入意思はなかったので、売り込み時の話がベトナム在住者などから漏れたものと見られています。もちろん、インドネシアなんて話もありました。ランカス~ムラクの非電化区間に充当することが目されていたようですが、当然、インドネシアは中古車輸入を完全に閉ざしましたので、これも実現はせず。最終的にタイ、SRTとの“お見合い”が成立し、譲渡先として選ばれたわけですが、これが最初の空白でした。

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新潟東港での塩漬けは回避されましたが…

問題はこの先です。タイに決まったは良いものの、SRTの輸送入札で、トンデモ会社(B社)が勝ち取ってしまい、ここからが悪夢の始まりです。鉄道車両の輸送ノウハウを何も持っていないようで、全く輸送が始まらない。秋田から搬出されたタイミングからして、年度会計上、これ以上、JR側で保管できないというギリギリのタイミングでの見切り発車で、なんとか2024年3月に秋田を離れることになりました。当時、追っかけしていた人ならわかる通り、土日、祝日も関係なしに搬出されるという、異例の事態。この業者は、タイムリミットとなる2024年3月30日までにレールから離すことを最優先していたと思われます。少し手配が遅れていれば、海を渡らずにそのまま廃車になるという可能性すらあったという、間一髪でした。

複数の関係者によると、B社は過去に鉄道車両を輸送した経験がほぼなく、本業は別の事業にあると言います。関係者のヒントをもとにして、B社のウェブサイトにたどり着きましたが、元のホームページはサーバー維持費未払いか何かで消えているようで、急ごしらえでワードプレスを使って、ページが作られています。事業内容には国内外物流に関する輸出入手続きを含む業務請負と書かれていますが、主な業務は建築・設計、デザイン、システム開発である様子。建築とIT を融合させた会社として紹介されていて、なんだか胡散臭い。

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ノンプラドゥックに構えるこの保線会社がパートナーのようで…

一方で、B社は90年代に、アジアへのビジネス展開も積極的で、タイでは日系企業向けに工場やオフィスのデザイン設計や機器の据え付けを行っていたとも書かれています。タイの社会に、一定のコネクションを今も持っているものと思われ、今回の入札に至ったものと推測されます。この輸送にはタイ側のパートナーとして、SRTの一部区間の保線業務を請け負う民間の保線会社も加わっていました。この保線会社は日本からの中古保線機材を多数保有しており、SRT(メーククロン線)の車両陸送なども行っており、SRTにはかなり顔の効く存在、というかズブズブの関係ですよね。ただ、日本側の輸送には日本のパートナーが必要で、この保線会社とB社になんらかの繋がりがあった可能性が高いです。

あるいは、B社は過去に保線機材の輸出ビジネスをしていて、その頃からの付き合いということも考えられます。実際、新潟東港からの出港時に、貨物船はキハ40の他、マルチプルタイタンパーと思しき保線機材1台も一緒に積み込んでいましたからね。ただ、保線機材と営業用の鉄道車両では輸送方法も、取り扱い方法が全く異なります。

B社は天文学的の負債を抱えており、近年はほとんど取引実績がないのではなかったのではないかとも言われています。確かにウェブサイトも会社概要以外は開けなくなっているほか、所在地をグーグルマップで調べてみると、住宅地の真ん中にあり、事務所らしき建物は見当たりません。経済産業省のサイトでは、同じ住所で別法人の名称で登録されていますが、これも2023年5月に清算完了とあります。ただ、1年前に口コミが投稿されており、「床はガタガタ、壁紙なども安っぽくて跡がつきやすい。仕事が遅く納期に間に合わない」と、酷いもの…。

発注側からフォワーダーへ発注額の全額が支払われるのは、契約条件にもよりますが、全ての輸送、あるいは現地での車両立ち上げが完了した時点というのが一般的です。つまり、車両のような特大貨物を輸送するには、数千万円以上の事前持ち出しが発生します。甲種輸送の設定が年度末ぎりぎりになったというのも頷けますね。相当の内部留保がなければ、手が出せない案件にも関わらず、どうして入札に挑んだのでしょうか。というか、誰がこんな会社にカネを貸したんでしょうね。銀行融資なんて、業績からしてとっくに出来なくなっているはずです。

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SRTがどうして自前で保線をしないのか不思議でならないですが、
タイの保線業者はなんだか闇深いですね

考えられるのは、多額のカネが動く鉄道車両輸送を起死回生のチャンスと目論んでいたことです。特に鉄道車両を輸送したという実績は、人目に留まりやすく、宣伝効果が高い。メディア露出することもある。次に繋ぐことが出来れば、大きな利益に繋がることもあります。一時期、西の方の某社がそういう手法を取っていましたよね。中古車両が輸送途中で消えてしまう(岸壁や保管場所に長らく留め置かれ、いつの間ににか解体されている等)ということは過去にいくつか発生しており、車両輸送が売名的に使われることはあり得ない話ではありません。

よって、新潟東港までは輸送されたものの、輸送する船は当分来ないのではないかと私は予想しましたが、案外早く、貨物船は手配され、20両のキハ40は5月に新潟東港からタイに向けて旅立ちました。港での保管料も無視できる額ではなく、留め置きが長くなればなるほど、費用は積み重なっていくことから、船の手配を急いだのでしょう。ただ、見切り発車に変わりないので、問題はこの先も続きます。

これは記事にも書きましたが、貨物船は6月にタイのレムチャバンに到着したものの、ここで再び、1年近くスタック。なぜなら、B社に台車着脱のノウハウがありません。というか、本来はこれは新潟東港で実施するという契約になっているはずです。それを無視して、船積みしたのです。中古車両の輸送では、よりコストを圧縮するために、台車を切り離さず、そのまま輸送するのが一般的です。しかし、SRTの線路幅はメーター軌ですので、否が応でも、輸送途中、どこかのタイミングで台車を切り離さなければならなりません。しかし、B社はこの作業行程も予算も考慮していなかったようで…。本来であれば、新潟東港で専門の技術者に依頼し、台車を切り離して船積みしていなければならなかったのです。

なんとか予算を確保したのか、最終的に技術者が招かれ、レムチャバン駅構内で台車切り離しが行われたが、2025年3月のこと。台車のみが、先にSRTマッカサン工場に搬入され、さっそくSRTの手により、メーター軌への対応がされました。そして、同年5月には、車両もマッカサン工場に到着し、タイでの運用開始に向けた各種改造工事がスタートすることになったのです。

中古車両の輸送、輸出は、コンプライアンス上の問題で、近年、大手の輸送業者や商社は手を出しません。そうなると、玉石混交の中小業者が幅を利かせます。国際物流をやる業者の中には、胡散臭い商売人や、反社勢力のような会社も結構あり、今回はその悪い面が最大限に出たという感じです。幸い、インドネシアではインドネシア側の目が厳しいこともあり、かつて、一時期変な業者が輸送して、車両を壊しそうになりましたが、なんとかクオリティは担保されていました。

しかし、国が国としての体をなしていないと、当然怪しい業者が暗躍することになります。まあ、なので、私は仮に誘われようともカンボジアなんかには絶対に行かないわけです。あと、私はコンゴには行ってませんよ。あんなマックロな案件のを宣伝するわけにはいきませんからね。

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